薬学部の新設は本当に悪なのか?

大学キャンパスの画像

新潟薬科大学が2018年4月長野県上田市に薬学部を新設する開設目標を2019年4月に1年延期することとなりました。

 

市や県からの財政支援が決定しないと着工ができないということです。

 

さてさて、色々な所から「薬学部はもういらない」「薬学部は新設しても無駄」との声が聞かれています。

 

普通に考えればそうなんですが、全国各地の薬学部を訪問し、採用してきた経験を踏まえてちょっと考えを書き留めておきたいなと思います。

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これ以上の薬学部は必要ない

入試倍率、偏差値、定員割れetcどの現状を考えてみても薬学部が飽和状態であるのは明確です。

 

2006年から薬学部が6年制となり、同時に約1200万円という高額な費用も必要となりました。加えて薬学部の新設ラッシュ。

およそ10年間の薬学部を取り巻く環境が”優秀な薬剤師の輩出”につながっているとは到底思えない現状です。

 

しかし、上にも記した通り今も新たな薬学部が新設されようとしています。

上記以外にも和歌山県和歌山市(県立医科大学薬学部)や山口県(公立山口理科大学薬学部)などにも薬学部が新設される予定です。

 

これ以上薬学部が増えても仕方がないというのは明確であって、「薬学部新設反対」という声が各地で出ているのも良く理解できます。

 

ただ、長年に渡り薬剤師の採用・育成に携わってきた筆者は「条件次第で賛成」という考えを持っており、新潟薬科大学が長野県に薬学部を新設することに対しては「大賛成」の立場です。

 

マクロ的指標だけではわからない、現場目線での「長野県への薬学部新設賛成」について説明したいと思います。

薬学部を必要としている人がいる

筆者の経験の中には、”全国の薬学部を訪問”して”学生や教授とコミュニケーションをとる”ことが非常に多くありました。

 

学校や学生の雰囲気や先生の学生評価など本当に様々で「薬学部といっても全て同じではないんだな」ということが良く分かりました。

 

そういった過去の経験の中で、ある地方の薬学部を訪問した際にキャリアセンターの課長から言われた言葉が非常に印象に残っています。

 

「県内に住んでいる子はうちの大学しか来れないからね。東京に行っても生活費が高くて大変でしょ?だから県内の優秀な子がいっぱいこの大学に来てますよ。」

 

その大学は決して偏差値が高いとは言えない新設校です。当然、県内の優秀な高校生で全国各地の偏差値の高い薬学部に入学する高校生はたくさんいるとは思いますが、「実家を離れてまで大学に通いたくない」という学生がいることもまた事実。

 

特に薬学部は学費の高い学業なので、年間100万円もの生活費を無駄に払いたくないという学生は話をした中では非常に多かったのを覚えています。

薬学部の飽和は設立場所の問題では?

大学に通う学生やその家族の立場で考えてみると、実家から通えずに薬学部の進学をあきらめている人が世の中にはたくさんいると思います。

 

全国には70を超える薬学部がありますが、その場所は偏在していて薬学部のある都道府県は31だけ。

東京都には11の薬学部が集約され、人口比率でみても過剰という数字です。

となりの千葉県には7つの薬学部があり、これも過剰。

 

逆に茨城県には薬学部が存在せず、神奈川県には横浜薬科大学しかありません。

 

このように人口に対しての薬学部設置数の偏りにより、「過剰な場所」と「足りない場所」が混在しているということです。

 

また都内の大学に訪問した際の”あるある”の話ですが、

筆者「どこの出身なの?」

学生「長野県です。」

筆者「一人暮らし大変でしょう?」

学生「でも家から通える薬学部が無いんで、都内が一番交通の便がいいので仕方ないです。」

 

という会話。

とにかく都内の薬学部には長野県出身者が多いんです。どこの薬学部にいってもまず間違いなく在籍しています。

これは薬学を学ぶために仕方なく都内の大学に入学している学生がいるということを知って欲しいなと思います。

適所の薬学部新設が望ましい

薬学部の数は飽和ですが、上記のような問題を抱えていることもあります。

最終的には薬学部は淘汰されていくでしょうが、新設してはいけないということではありません。

 

コンビニエンスストアと同じように、ある一定のエリアに過剰な出店があれば閉店する店舗も出てくるでしょうし、コンビニの無いエリアには新規出店されます。

 

「今あるだけで十分でしょ?」という考え方は生活者意識の足りない考え方だと思います。

 

確かに大学や学部を新設するということは多大な資金と労力を要する話ですが、だからこそ自治体と連携して地域のために進められるべきではないでしょうか。外部の人間がとやかく言うことではありません。

 

例えば、長野県に薬学部が新設され長野県から都内やその他都道府県の薬学部に学生が流れなくなったら、都内やその他のエリアで薬学部が淘汰されればいいのではないでしょうか?

 

薬学部の所在地が偏在している現在、薬剤師を目指す若者から薬学を学ぶチャンスを失ってしまっているということに目を向けるならば、長野県、和歌山県、山口県など今薬学部が存在しない都道府県に新設することは筆者は大賛成であり、東京都や千葉県などの薬学部過剰エリア(人口対比)の薬学部が淘汰されてるべきだと考えます。

 

こうして優秀な学生が薬剤師になることを諦めることなく、夢を実現できる環境になってもらいたいものです。

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kinet様

コメントありがとうございます。筆者のことだまこまちです。

kinet様がおっしゃられている問題は過去に行われていた”薬学部の乱立”問題のツケであると考えています。

ここで記載させていただいている内容は、都市圏に偏重している薬学部を閉鎖しながら薬学部の無いエリアに新設すべきという”scrap&build”です。
グロスで薬学部が増え続けることに関しましては筆者も反対意見をもっています。

mano様

コメントありがとうございます。筆者のことだまこまちです。

mano様のおっしゃる通り、現在の薬学教育に関しては問題が山積されています。現場を見ていた私も歯がゆい思いでこの記事を書かせていただきました。今後も薬学教育に関して問題提起できるような記事を書いてまいります。

パーマン1号様

コメントありがとうございます。筆者のことだまこまちです。

私の場合4年制を卒業しておりますが、それでも親が身を粉にして働いて卒業をさせていただきました。6年制、学費高騰は優秀な人材を逃してしまってるようにしか思えませんよね。

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コメント: 3
  • #1

    mamo (火曜日, 07 3月 2017 18:26)

    私も我が子が薬学部進みたいのに断念した保護者です。私学だと平気で年間200万円かかり、しかも学生マンション借りなきゃいけないなんて、経済的にとても無理でした。今の新設薬学部は生き残りのため力の無い学生は国家試験合格率だけのため否応なしに留年されます。しかも親元離れて。私はそんな蟻地獄的な思いまでさせて薬剤師になって貰いたくないです。

  • #2

    パーマン1号 (水曜日, 08 3月 2017 18:51)

    栃木県にある某福祉大学も寮に入れる期間はわずか2年。あとはアパート借りるしかない。これ考えるとやはり医学部以外は4年間で大卒、あとは就職か院進学かです。さすがに私学で6年(最短)は厳しい。なにも薬剤師ばかりが仕事じゃないよ。

  • #3

    kinet (月曜日, 10 7月 2017 11:13)

    では、四国にある薬学部の2校をモデルとしてみてください。
    入学試験でパスできない学生は、あきらかに高校生の並みの学力を持たない者以外ではほぼ皆無です。(全入)それでいて、学年の入学定員にも達することができません。
    これだけ薬学部が必要だと言ってきて国公立で新設したケースはありません。私立にとって、ただの金儲けで設立してきたことの表われでしょう。
    自分の出身校の当時助手だった先生が四国の新設の薬学部の准教授になっています。
    しかし、あまりにも低レベル(基礎学力が備わっていない、先天的にIQが低いと思われる)な学生への授業が無理あると言い、留年と卒業試験によるフィルターでの大学としての国家試験合格率調整があまりにも馬鹿げたレベルと言っています。大学は学費さえもらえれば、あとは自助努力でどうぞといった態度だそうです。 これがすでに現実となっている実態です。これ以上低レベルの無責任な薬学部を増やしてどうするのでしょう?