薬学部の人気低迷の理由を考える

下落しているグラフの画像

”不本意ながら”の記事です。

 

薬学部が人気であるかのようなサイトを良く見かけますが、現実は異なります。

 

とても残念なお話なのですが、まずは客観的事実を把握したうえで、現在の薬学教育がおかれている状況について考えてみたいと思います。

 

あくまでも現時点においては薬学部人気低迷していても、将来についてはまだまだ未知数です。

 

薬剤師全体のレベル向上のためにも薬学部人気の再燃は必要ですよね! 

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薬学部の人気低迷は事実か?

2006年の薬学部6年制スタートと新設校の増加を理由に薬学部人気が低迷しました。

 

その後、薬学部志願者は2010年に底打ちし2014年度まで人気が回復、2015年度、2016年度と薬学部志願者数が再度減少しています。

 

「薬学部が人気」というニュースについては主に入試倍率で見ていますので、最近の入学定員数減少による入試倍率への影響があったのかもしれません。

 

では、河合塾が2015/6/16に発表している薬学部志願者の推移を見てみましょう。

 

薬学部の志願者数推移のグラフ

4年制最後の年には12万3千人の志願者がいましたが、6年制のスタートと同時に薬学部の志願者数が激減しているのが分かります。

 

その後の志願者数増加については、河合塾によると

 

2013・14 年度の2年間は大幅な志願者増加を見せていた。国公立大においても、2009・10 年度あたりを底に、志願者は増加傾向にあった。背景には資格人気があった。地元で就職が望める医療系は女子を中心に人気となっており、6年制化で一旦人気が低下していた薬学部は資格人気を追い風に人気となっていた。

 

と薬学部が人気化した理由を説明しています。

 

私立大 学部系統別志願状況のグラフ

では、2016年度について見てみると、2016/2/23に発表された河合塾の資料より、薬学部の志願者数が対前年比94%であることが分かります。

 

昨年度が9.9万人でしたので、約9.3万人という計算です。

 

他の医療系学部と比較すればわかりやすいのですが、医歯看護すべてが大きく前年志願者を上回っているのに対して、薬学部のみが前年割れをしている状況です。

 

この傾向は2015年と変わりなく、河合塾では薬学部を不人気系統と位置づけをしています。

 

「学部人気」については何を根拠に判断するのか?となりますが、その他の学部との比較が最もわかりやすいと思います。

薬学部人気低迷の理由を考えてみる

大学の学部人気に影響を与える因子は1つや2つではなく、さまざまな因子が複雑に重なり合って影響を及ぼすものです。

 

人気低迷理由を考察している色々な意見がありますので、見ていきたいと思います。

 

 

医療系国家試験 合格率推移のグラフ

まずは、前述の河合塾(2015/6/16)の資料からです。

 

【図表4】は医療系国家試験の合格率推移である。過去 10 年余りをみると、医師、看護師の合格率は9割前後で推移している。一方、薬剤師は6年制に移行した初年度は9割近い合格率となったものの、その後は大きく下がっている。とくにここ2年は6割程度に低迷している。2015 年度の受験生は2014 年に実施された国家試験の結果を参考にしていることは想像に難くない。6年をかけて卒業しても薬剤師の資格を取得できるのは6割余り、この結果が薬学部敬遠の動きとなってもおかしくはない。

 

 

と考察しています。

 

端的にいうと、

 

6年という長い時間をかけても薬剤師になれないリスクが高い。

 

という意見です。

 

次に、東京薬科大学 理事長 今西信幸氏の講演会「薬学6年制の現況と展望」の資料より抜粋したものをご覧ください。

 

●優秀な女性の流出傾向

このような現状が、先輩薬剤師の皆さんに伝わらない形では、薬剤師の存在が根源から失われるような状態です。薬業界の産業の要である薬剤師がこのままで良いのでしょうか。皆さんと一緒に声をあげて、変えていく必要があると思います。

ちなみに、いま、女性に大きな流れの変化が起こっています。看護学部の偏差値が著しく上がっているのです。看護学部は4年制で、学費は私立でトータル500万円です。薬学部が4年制で600万円だったころは、ステータスを考えて薬剤師を選んでくれていた女性たちが、薬学部が6年制になり、私大平均で1200万円になってから、経済的理由等で看護学部を選んでいるのです。それで偏差値がぐっと上がったのです。

ですから、薬学部だけではなく、他学との関係への策も講じた上で、薬剤師の未来をどうすればいいかを考える必要があります。

 

経済的理由等で看護学部を選んでいる。

 

という発言をされています。

 

二人に一人が奨学金による学費支払いをしている現状です。

 

日本の奨学金は貸与型がほとんどですので、”奨学金=借金”です。

 

多くの薬学生が6年間で1200万円の奨学金を借りていますが、社会に出ると同時に多額の借金の返済が始まります。

 

将来のことを考えると、薬学部に尻込みしてしまう気持ちもわかりますね。

 

 

しかし、それでも医学部の人気が上昇しているということを考えると、ただ単に学費のみの問題ではないはずです。

 

もう気付いている薬剤師の方も多々いらっしゃると思いますが、現6年制になってからは「薬剤師はコスパが悪い」との声が多くなっています。

 

将来の実生活への不安も人気低迷の一つになっているのかもしれません。

 

 

そして、忘れてならないのは、説明するまでもなく

 

「薬剤師が飽和する」というイメージが定着している。

 

ことです。当サイト内の薬剤師の飽和に関するページも毎日多くの検索にかかっていますので、まだまだ薬剤師が飽和するであろうという”うわさ”に関する問題は大きいと思います。

 

 

その他、様々な要因があると思いますが薬学部6年制がスタートして10年経った現在、薬学部人気が低迷している理由は以上の要素が大きいのではないかと思います。

 

薬学部の人気復活にむけて

前回の調剤報酬制度の抜本的改革の必要性についてでも書きましたが、薬剤師を目指す若人が減少するということは薬剤師の質の担保に関わる問題です。

 

学校は胡坐をかいているわけではありませんが、現状として、

 

薬学部増 → 受験者減 → 偏差値低下 → 国家試験合格率低下 → 受験者減 …

 

という負のスパイラルに陥り、抜けられなくなってしまいました。

 

今後、薬学部が減少することは必然としても、それ以外の要因を排除しなければ薬学部人気は復活しないでしょう。

 

道のりは遠いのかもしれませんが、私も出来ることをやっていかなければいけないな…と思っています。

 

「薬剤師って素晴らしい」と言われるような時代がくるといいですね。

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