薬剤師飽和時代は本当に来るのか考察してみる。

腕組みをする薬剤師

「薬剤師飽和の時代がくるぞ!」といつから言われているのか皆さんご存知ですか?

 

遡ること約30年前、医薬分業体制の進展による薬剤師必要数の調査という目的で【昭和59年厚生行政科学研究「医薬分業体制下における薬剤師の必要数に関する調査研究」】において討議されたのがスタートでした。

 

なんと30年前です!もちろん私が在学していた約20年前にも言われてました。そして今も薬学教育の中でも言われています。しかしながら皆さんもご承知の通り、薬剤師雇用のマーケットは引く手あまたの超売り手市場です。

 

国が発表しているのにおかしな話ですよね。そして「いつ薬剤師飽和の時代が来るのか、みな不安に思いながら仕事をしている」という状況がずっと続いているのではないでしょうか?

 

これから転職を考えている薬剤師の皆さんにとって、薬剤師飽和時代の到来(来ないかもしれませんが)が大きな影響を及ぼすかもしれませんので、このページで実態を知っておいていただけたらと思います!

 

ちなみに昭和59年の研究の後は、【平成8年度厚生行政科学研究「新たな薬剤師の需給の予測に関する研究」】、【平成12年度厚生行政科学研究 医薬安全総合研究事業「調剤業務の適正な運営及び管理のために必要な薬剤師数に関する研究」の分担研究「薬剤師需給の予測に関する研究」】などの研究を重ねて、現在に至るまで薬剤師の需給バランスの変化を検討している状況です。

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- 目次 -

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1.現時点での薬剤師需給予測

 1-1 薬剤師需給予測の不確実性の考察

 1-2 結局、薬剤師は飽和するのか?

2.薬剤師飽和問題の総括

現時点での薬剤師需給予測

2013年厚生労働科学研究費補助金「薬剤師需給動向の予測に関する研究」班の総括研究報告書によると、2035年度までの薬剤師需給に関するシミュレーションを行い、「現時点では地域偏在はあり得るものの、薬剤師の過不足が直ちに問題になるとは考えにくい。ただし、就職率向上の継続などを仮定、10年単位で考えると、今後薬剤師が過剰になるとの予測を否定できるものではない」と結論を出しました。

 

昭和59年当初から、当然ながら国はしっかりと統計調査をしているのですが、なかなか予測通りにいっていないというのが現実です。

 

前述の最新の需給予測では”薬剤師の飽和”に関する言い回しのトーンが低くなっているのがわかると思います。”予測を否定できるものではない”というのは予測不能という捉え方で間違いないのですが、なぜこうも需給予測をたてづらいのか考察してみましょう。

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薬剤師需給予測の不確実性の考察

薬剤師の需給予測は現在の厚生労働省にあたる省庁で行われてきたものです。いわゆる行政の部分ですね。行政としては、今ある法制度の中で予測を立てるわけですが、薬業界を取り巻く要素の中心は「法律」です。その法律が変化してしまったら、予測は当てはまらなくなってしまうということになります。

 

例えば現法において薬剤師は一人当たり1日40枚の処方せん応需が出来ます。厚生労働省の各種検討会では薬剤師一人当たり年間最大10,000枚の処方せんを応需出来る所を、確実性のある年間8,000枚の処方せん応需として需給予測をはじき出しました。一日当たり約33枚の計算です。

 

しかし薬剤師の現場では様々なルールの変化と共に業務内容が変わっています。平成25年では薬剤師一人当たり年間約5,200枚の処方せんしか応需していません。1日当たり約21枚です。予測に対して、65%の処方せん応需見込みしかありません。

 

これは厚生労働省のミスではなく、予測を発信した時点よりも処方せん1枚に対しての業務量が増えてしまったために、薬剤師一人当たりの応需処方せん枚数が減ってしまったと言った方がいいでしょう。

 

こうして、調剤現場を取り巻く環境が変化し続ける限り、需給バランスなどは絵に描いた餅となってしまいます。今後も様々な予測が飛び交って薬剤師を不安にさせると思いますが、それはあくまでも予測ですので振り回されないほうが良いでしょう。

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結局、薬剤師は飽和するのか?

国が代表者を集めて様々な見地から薬剤師飽和に対する検討会を重ねても、答えは見つかっていません。法律などの外部環境要因に起因して、薬剤師の必要員数が変わってきてしまうからです。非常にあいまいな言い方になってしまいますが、飽和するための条件をまとめます。

  • 薬剤師の職域が狭まって、業務量が減った場合
  • 薬学教育の間口が広がった場合
  • 薬剤師国家試験の傾向が変化し、合格者が量産されるようになった場合

以上が外部環境要因として、飽和するための条件と言えるでしょう。

では、私たち薬剤師は何を考え、何を気にしていれば薬剤師飽和にいち早く気づくことが出来るでしょうか。

  • 薬剤師の求人数の減少
  • 薬剤師の平均年収・平均時給の低下
  • 調剤薬局の残業時間の減少(実態としては人時生産性の低下)

これは、皆さんが働いている職場でも感じ取れることだと思います。

ちなみに現在、東京都の薬剤師は飽和になりつつあるといわれていますので、年収は低いですよね!これから飽和するのかしないのかは別として、安心して満足して働くことが出来る職場が見つかると良いですね!

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薬剤師飽和問題の総括

薬剤師の需給予測に関して考察を行いましたが、最後に薬剤師飽和問題の総括をします。

 

そもそも、”医薬分業体制”おいて薬剤師の人数がどれだけ必要になるのか、又は過剰になるのかを調査した【昭和59年厚生行政科学研究「医薬分業体制下における薬剤師の必要数に関する調査研究」】が薬剤師飽和問題のスタートです。

 

大雑把に言えば、「処方箋が増えると薬剤師は何人必要か」という問題になります。

 

世の中の多くは、「薬剤師人数の伸び率と処方箋発行枚数の伸び率」で薬剤師の飽和について討議しています。しかし、本当に目を当てなければならないのは、「薬剤師人数の伸び率×薬剤師業務内容(職務・職責)の増加率と処方箋発行枚数の伸び率」です。

 

残念ながら、現在は「薬剤師の職務・職責」について重要性を唱える傾向に乏しく、薬剤師が不足しているがために薬剤師実務面にしか意識が回っていない状況です。

 

2013年の最新の需給予測では「2035年までに飽和を否定できるものではない。」というものになっていますが、2025年問題や同年の病院機能分化改革などの外部環境要因により薬剤師の業務内容も大きく左右されるはずですので、今後も受給予測がピタッと当てはまることはないでしょう。

 

結局私たち薬剤師は「生活者から必要とされている、医療人としての使命を全うすること」を堅実に行っていけば、世の中から「薬剤師は過剰だ」と言われることがないのではないでしょうか。

 

<追記>

平成27年10月23日に厚生労働省が発信した【患者のための薬局ビジョン~「門前」から「かかりつけ」、そして「地域」へ~】において、2025年までに薬局は24時間対応を求められています。

 

薬剤師飽和の心配よりも薬剤師の職責に関る心配をした方がいいかもしれませんね。 

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<参考サイト>

厚生労働省

日本薬剤師会

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